注文住宅を希望していた人が建売住宅を選んだ意外な理由(前編)
一級建築士の元にあった従兄弟からの相談
今回、興味深い話を教えてくださったのは一級建築士のA氏。彼は東京の大学で建築について学び、一級建築士となりました。最初は飲食店などの店舗を設計する事務所に入ったこともあり、事業用物件の設計を担当します。ですが、40代になり故郷にも事務所を構えたいと九州に戻り、二拠点生活を送るようになりました。
九州では一戸建て物件の設計も手掛けるようになり、今では万能な設計士として活動しています。
さて、そんな彼の元に、従兄弟から相談が舞い込みます。
「30代のうちに一戸建てを購入しようと思っているんだ」
相談の主は30代後半の共働きのご夫婦。お子さんは2人で、ともに保育園児。相談の時点では上のお子さまが年長で、翌年には小学校入学を控えているというタイミングでした。
勤務地はご主人が福岡市、奥さまは北九州市とのことで、どちらにも通勤可能な場所が希望。そこで、Aさんの知り合いの仲介業者を使い、土地探しからお付き合いすることになりました。
ご夫婦ともに正社員で貯金額は1000万円以上!
このご夫婦はともに正社員であり、世帯収入は一般的な世帯よりも高額でした。結婚してから約10年経っていて、貯蓄額は約1000万円。住宅ローンを組むことを考えても有利な状態で、当人の希望もあり、新しく注文住宅を建設すること以外の選択肢はなかったとのこと。
A氏としては、初めての親族からの依頼であり、設計料はもらわず実費のみで引き受けることにしたそうです。
注文住宅は建て主の要望を聞いて設計をするのはもちろんですが、土地の形状や方角、隣の家の住宅の状況も考慮する必要があるため、土地を購入してから設計をはじめるのが一般的です。
しかし、お子さんの小学校入学が1年後に控えており、土地探しに時間がかかることも考え、A氏はある提案をします。
「仮に、希望通りの正方形で南向きの土地を購入できたとして、どんな家を建てられるかシミュレーションしてみないか」と。当然ご夫婦はよろこびで、理想の家づくりをスタートしたそうです。
でてきたたくさんの要望
ご夫婦に要望を聞くと、たくさんのものが出てきました。
- 家は2階建て
- 子どもにはそれぞれに部屋をもたせたいので、できれば4 LDK
- リビングから庭に出られる、大きなウッドデッキがほしい
- 部屋は常に明るくしたいので、窓は大きいのが希望
- 収納はたっぷりと。玄関周りにも大きな収納がほしい
- 駐車場は、2台は必須。臨時でもう一台停められるスペースがあるとうれしい
- リビングは広い方がいいが、両親が来たときなど気を遣いながら家事をしたくないので、何らかの形で仕切れるとうれしい
- 玄関には宅配ボックスを設置
- 老後を考え、階段を上ってから玄関があるのはNG
- 腰痛持ちなので、階段には手すりが必須
- (周りの環境にもよるが)塀で区切るのではなく、木などを植えることでやんわりと区切りたい
- 外壁はダークな色。汚れが目立つのは避けたい
- 2階に屋根付きのバルコニーがほしい
- 和室は客間だけ。後はすべて洋室(フローリング)
- 温かみを感じられる明るい木目と真っ白な壁がバランスよく映える内装
- 風呂場は広いほうがよいけれど、広すぎる浴槽はいらない
- 洗面台はひとつでよいが、洗面室は広くしたい(2人が同時利用できるように)
- トイレは1階にも2階にもほしい
あれもこれもと楽しそうに話す夫婦を見て、A氏も楽しくなったそうです。